「産業保健」とは、働く人々の健康を守り、安心して働ける環境を構築し、労働生産性の向上を図ることを目的とした活動のことです
産業保健の主な焦点は
(i) 労働者の健康と労働力の維持と促進
(ii) 労働環境の改善と安全衛生に資する労働
(iii) 労働安全衛生の支援に基づく、働く組織や職場文化の発展
(ILO/WHO(国際労働機関/世界保健機関)合同委員会(1995年)が定義)
「労働衛生」とは、労働者の健康を維持するために,職場の労働条件や作業環境を改善することをいいます。
労働衛生対策の視点として「作業環境管理」、「作業管理」、「健康管理」の3管理に、「労働衛生管理体制の確立」と 「労働衛生教育」を加えた 5管理 があります。
6項目に分かれます。
業態は、2つあります。
専属産業医、嘱託産業医に分かれます。
(さらに大きな会社は、専属産業医を統括する統括産業医がいます。)
専属産業医:1000名以上の事業場、
嘱託産業医:50名以上の事業場で選任が求められます。
専属産業医:年収1000~1500万円、
嘱託産業医:1時間5万程度が相場となります。
「従業員50名以上」を超えた場合、嘱託産業医を新たに選任することが義務付けられます。
「従業員1000名以上」を超えた場合、専属産業医を選任する義務があります。
「従業員3001名以上」を超えた場合、専属産業医2名を選任する義務があります。
※従業員は、正社員、パートタイマー、アルバイト、契約従業員、派遣従業員も含めた全ての労働者数です。
契約方法は、2つあります。
2者間契約(産業医と企業が直接契約)、3者間契約(産業医と企業、紹介会社)に分かれます。
2者間契約:企業が産業医を直接契約し、医師本人と雇用契約を結びます。
3者間契約:紹介会社が雇用手続きをフォローする代わりに、産業医業務を受託する紹介会社と業務委託契約を締結します。その際には、雇用契約を結ぶ必要はありません。
方法は、4つあります。
・地域医師会より紹介:都道府県(47箇所)、群市区(500箇所程)。
・健診機関/クリニックより紹介:企業の健康診断/依頼先への委託。
・産業医・医師/ 人材紹介会社の利用
・地域産業保健センターの利用:都道府県(47箇所)。労働者50名未満の小規模事業場のみ利用可。
労働安全衛生法に基づき、一定の基準に該当する事業場では安全委員会、
衛生委員会(又は両委員会を統合した安全衛生委員会)を設置しなければいけません。
衛生管理者は、労働者の健康障害や労働災害を防止するために、労働安全衛生法で定められた国家資格です。
50人以上の労働者がいる職場では、衛生管理者を選任しなければなりません。
問題ございません。社員の身分の違いによる制限はありません。ただし衛生委員会を円滑に運営する上では、管理職だけでなく、一般労働者もいる方が望ましいといわれています。
産業医は構成員としては必須になりますが、参加に対しては任意となります。
ただし産業医の欠席が常態化すると、衛生委員会の本来の目的にそぐわない可能性があり、そういった産業医は「名義貸し産業医」と呼ばれる状態となります。
法的な実施義務はありません。
「衛生講話」は、
頻度・開催方法など法に定められているものではなく、健康教育の一環として企業・組織の自発的な要望により開催されるものです。
労働安全衛生法(第
66条の1)により、事業者に実施が義務づけられている健康診断には「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2つの健康診断があります。
検査項目には種類・目的に応じて労働安全衛生規則によって定められた診断項目・基準値があります。
「有所見」とは、定期健康診断等の結果、何らかの異常の所見が認められたことをいいます。
事業者は、
労働安全衛生法(第六十六条の四)に従い、所見のあった従業員に対して、就業上の措置に関して医師等の意見を聴取する必要があります。
有所見者以外も確認してもらう事を推奨しています。
健康診断実施後には、労働安全衛生法(第66条の3及び第66条の4)により、医師からの意見の聴取、保健指導等の措置が義務づけられています。
安衛法66条で「健康診断の義務付け」、また120条では健康診断を怠った場合に事業者は「50万円以下」の罰金に処せられるという罰則規定を定めています。これにより事業者は「常時使用する労働者」について、雇い入れの際と、その後1年以内ごとに1回の定期健康診断を行うことが義務付けられています。
対象になります。常態として、その労働者を使用しているかどうかで判断します。
「常時50名以上の労働者を使用する事業場」であれば、その労働者に実施義務があります。
派遣労働者に対するストレスチェックと面接指導については、労働安全衛生法に基づき、派遣元事業者が実施します。 派遣先事業者は、派遣元事業者が実施するストレスチェックと面接指導を受けることができるよう、派遣労働者に対し、必要な配慮をすることが「適当」であるとされています。
50人未満の事業場で実施する場合、法令・指針等に従う必要があります。ただし労働基準監督署への報告に関しては、50人未満の事業場については、報告義務はありません。 派遣先事業者は、派遣元事業者が実施するストレスチェックと面接指導を受けることができるよう、派遣労働者に対し、必要な配慮をすることが「適当」であるとされています。
実施者は、「事業場で選任されている産業医が実施者となることが最も望ましい」とされ、医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師から実施者を選定しなければなりません。
医師であれば産業医の資格がなくとも、 高ストレス者の面接指導を実施できますが、一般には、産業医又は事業場において産業保健活動に従事している医師が推奨されます。
必須ではありません。対象の方が希望している場合は面談が必要です。
法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守らなければなりません。
長時間労働者の面接指導実施は義務となります。
2008年4月より、時間外労働時間が月80時間以上となる労働者の場合、本人から申出があった際には産業医の面接指導を行う様にすべての事業場に対して義務付けられています。
また研究開発業務及び、高度プロフェッショナル制度対象労働者が月100時間以上となる場合、申出がない際にも面接指導を行う様に義務付けられています。(安衛法第66条の8、安衛則第52条の2)
労働安全衛生規則によると、「労働時間の状況」 について、事業者には、タイムカードによる記録、パソコンなどの使用時間の記録などの客観的な方法、事業者の現認などの客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録を把握する必要があります。
本人から申し出があった従業員の方と医師が面談して、問診票(チェックリスト)をもとに、勤務の状況及び疲労の蓄積の状況、心身の状況の確認し、脳・心臓疾患や精神疾患の早期に発見するととに予防方法などを指導します。
休職に対する法的な規定はなく、給料・タイミング・期間は企業の裁量(雇用慣行)によります。
期間は多くの場合、その社員の勤務期間より1カ月~3年程度であり、就業規則によって主治医判断だけでよい場合もあれば、産業医面談が必要な場合もあります。
法令では休職時の面談は必須としていません。該当従業員の方の状態次第では面談を経ずに休職に入ってしまう事もありますが、その場合は定期的に状況を確認出来るようにしておく事が望ましいです。
必ず従う必要はありません。最終判断は企業側が行うため、産業医はあくまでも医師としての意見を述べることが業務範囲です。
必ずしも主治医と産業医の意見がすべて一致するわけではありません。
産業医は、従業員の疾病診断や治療は行いません。
主治医の「診断」に対して、
産業医は、企業等から提供された健康管理等に必要な情報に基づき、面接や保健指導を行いながら、
産業保健の観点から当事者が就労可能な状態かを評価して「意見」を提示します。
復職できることを証明するのは本人であり、主治医の証明と本人の申し出が必要になります。
休職中に企業が本人と連絡やりとりをすることは可能ですが、産業医の面談などを通じて、本人に復職を催促することはできません。
産業保健師は産業医とも連携し、企業の従業員の健康管理をサポートをしていきます。
産業医は「従業員50名以上」を超えた場合、嘱託産業医を新たに選任することが義務付けられます。
一方、産業保健師に選任義務はありません。
企業が産業保健師を導入するメリットは、産業保健師が労働者や人事労務担当者、産業医などをつなぐコーディネーター役になることで、企業の産業保健活動をより強化できることです。
産業保健師は産業医判断(医師面談などの対応基準)に達さない軽度の不調を抱えた労働者への早期フォローや、企業側の日ごろの小さな相談に応じることもできる「身近な医療専門職」としての役割があり、産業保健体制を強固なものにしたい企業にとって、産業保健師は心強い存在になります。
保健師は第一種衛生管理者免許を受けることや、ストレスチェックの実施者になることができます。