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2026年9月8日、株式会社フジEAPセンターと株式会社エムステージとの共催で、オンラインセミナー『ストレスチェック後の集団分析を「結果」で終わらせない! 〜データを職場改善の“対話”に変えるアジェンダ活用術〜』を開催いたしました。
本セミナーでは、産業保健・健康経営分野で豊富な実績を持つ亀田高志先生(株式会社健康企業 代表取締役)に、集団分析を職場改善につなげるアジェンダ活用術を講演いただきました。
本記事では、その内容を一部ご紹介します。
本セミナーのポイント ・集団分析は報告して終わりではなく、従業員参加型ワークショップなどで、職場を動かすための「アジェンダ」として扱うことが重要。
・「悪い点の改善」だけにとらわれず、「長所の発展」に焦点を当てることで建設的な職場改善につながる。
・職場環境改善の取り組みを支える土台として、「心理的安全性」の構築が必要。 |
登壇者:亀田 高志 先生
株式会社健康企業 代表取締役/ 医師 / 労働衛生コンサルタント / 日本医師会認定産業医 / 日本内科学会認定内科医
1991年産業医科大学医学部卒。大手鉄鋼メーカー等の産業医、米国コンピュータ関連企業のアジア太平洋地域の健康管理担当、産業医科大学講師を経て、母校が2006年10月に設立したメンタルヘルス対策等を提供するベンチャー企業の創業社長を10期務める。2016年5月に任期満了で退任後、危機管理対策、人的資本経営の実践に領域を広げて、企業や自治体等の人事部門等に向けたコンサルティング、教育、啓発を手掛ける。担当した研修、講演会は延べ2千数百回、受講者は9万人以上。
本セミナーのキーワードである「アジェンダ」。これは、単に計画やスケジュールを指すのではなく、本質的には「全員で思考し、取り組み、変化を起こしていく」ためのテーマ(話し合いの材料)を意味しています。
本セミナーでは、ストレスチェックの集団分析を職場改善のアジェンダとしてどう活用していくか、そのヒントを解説いただきました。
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法令・規則に基づき、事業者の方針表明と衛生委員会等での調査審議を経て、いわゆるPDCAサイクルをメンタルヘルス対策で推進していく「心の健康づくり計画」の一環として位置づけられています。
具体的には、教育・情報提供やセルフケアの強化と並行して、職場環境の把握と改善を通じ、精神疾患を含むメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)を目指す取り組みです。
2015年12月より従業員50人以上の事業場で義務化され、2028年4月からは従業員50人未満の事業場においても義務化がスタートします。
なお、ストレスチェック実施後の職場ごとの集団分析の実施とその結果を活用した職場環境の改善は、事業場の規模にかかわらず、努力義務にとどまっています。
多くの企業でストレスチェックと共に集団分析が実施されていますが、その結果が実際の職場改善には活かされていないという課題があります。
その主な要因として、以下の3点が挙げられます。
・個人ごとの事後措置が中心となり、未然防止の効果を実感しづらい
高ストレスの判定を受けた個人からの申出による医師の面接指導(個人毎の事後措置)のみが中心だと、未然防止の効果を実感しづらくなります。
・「手段の目的化」の発生
ストレスチェックや集団分析を実施しても、電子申請となったストレスチェックの検査結果等報告の報告で終わってしまい、「手段の目的化」といえる状況が発生します。
・回答者(従業員と管理職)の関心が薄れていく
回答時期の繁忙感や個人的な悩みの有無など、回答者によってストレスが大きい時期は異なります。1年に1回の実施に終わることで、社内の関心が薄れてしまいます。
厚生労働省が毎年実施する「労働安全衛生調査(実態調査)」の令和7年版の結果においても、ストレスチェックの集団分析の結果が十分に活用されていない現状が浮き彫りになっています。
ストレスチェックを実施したと回答した事業所では、職場環境改善につながる、集団分析の結果の活用率は約65%でした。
ストレスチェックを実施すべき事業者の実施率は9割のため、対象全体では6割を切っており、この数字は非常に厳しいものといえます。
さらに具体的な活用内容の内訳を見ると、専門家が最も推奨している「従業員参加型ワークショップ」を実施している企業はわずか5.7%に過ぎません。この数字は、多くの企業で集団分析の活用ができていない現状の一端を裏付けています。
ストレスチェックの集団分析とは「職業性ストレス簡易調査票」に基づき、職場全体の健康リスクを評価する手法です。
「職業性ストレス簡易調査票」の質問数は57項目(短縮版では23項目)ですが、集団分析に直接利用されるのは、その内の12項目です。これらの質問は、「仕事の量的負担」「仕事のコントロール度」「上司の支援」「同僚の支援」の4つの尺度に分類されます。
そして、この4つの尺度から算出した点数を用いて作成されるのが「仕事のストレス判定図」です。
この判定図は、全国平均値(100)と比較することで、各職場の「不調の発生確率が高いかどうか(総合健康リスク)」を可視化します。
例えば判定値が118という点数の場合、全国平均に比べてメンタルヘルス不調等の健康問題が18%発生しやすい(リスクが高い)状態を意味します。
厚生労働省では、こうした集団分析の結果に基づいて職場環境改善を行い、「不調の未然防止」に取り組むことを強く推奨しています。
なお、厚生労働省と中央労働災害防止協会が主唱者となっている、令和8年度の「全国労働衛生週間実施要項」における重点事項としても、ストレスチェック結果の集団分析、およびこれを活用した職場環境改善の取り組みが強調されています。
集団分析で「仕事のストレス判定図」を算出した結果、大きな会社等では部署間でリスクの差が出ることがあります。ここで、得られた結果を単なる数値比較で終わらせず、改善に向けた「アジェンダ」としてどのように捉え直すかが重要になってきます。
職場環境改善に取り組む際に陥りがちなのが、悪い点を探して改善する「品質改善活動」のようなアプローチです。
集団分析結果を欠点の指摘やその改善のためだけのものと捉えてしまうと、ネガティブな側面ばかりに注目が集まり、かえって悪いサイクルを生み出してしまう可能性があります。
働きやすい職場づくりにつなげるためには、「悪い点の改善」ではなく「長所の発展」に着目することが重要です。
具体的には、「従業員参加型のワークショップ」などで集団分析を「対話のアジェンダ」として活用し、職場の良い点を見つけ、その長所をさらに発展させていく視点で改善を進める重要性が示されました。
数多くのワークショップを実施されたご経験からも、長所に着目したアジェンダを設定することで、参加者の対話が自ずと活発化しやすく、職場環境そのものを良くしていく前向きな捉え方へとつながっていきやすいと振り返ります。
さらに、このようなワークショップを実施することは「自分が回答した結果に対して、職場が取り組む意思がある」と従業員へ発信することになります。
というのも、ストレスチェックを受検する真面目な従業員は「現状を良くしてもらえるのではないか」と期待してストレスチェックに毎年、回答します。けれども職場が何も変わらなければ、年を経るごとに従業員の関心は薄れてしまいます。
結果を報告して「やりっぱなし」にするのではなく、全員で取り組み職場改善につなげる「アジェンダ」として活用する重要性が強調されました。
ワークショップ形式の職場環境改善に取り組む際のポイントは次の3つです。
① 特定の立場からだけでなく様々な角度から検討する
② 現場の状況に合わせた、無理なく実施できる提案を検討する
③ すべての従業員の意見をできるだけ反映する
集団分析を活用した職場改善を進めるには、土台となる「心理的安全性」が不可欠です。
心理的安全性の定義は以下の通りです。
職場は安全なところであり、公正な手続きにより人として等しく扱われる場であるという労働者の認知(1965年にSchein氏、Bennis氏によって組織開発の分野で提唱)
これは、従業員が自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態を指します。
また、Google社が発表した調査「アリストテレス・プロジェクト」では、生産性が高い職場の条件として「信頼性」「明瞭さ」「意味がある」「社会的影響」の要素が挙げられています。そして、これらの要素すべてを支える土台として「心理的安全性」が存在することが指摘されています。
心理的安全性の高い職場を築き、職場環境改善に繋げるためには、以下の具体的な対話と工夫が有効です。
【職場環境の改善を意識しながら、心理的安全性を高めていく対話と工夫】
・雑談を許容し、お互いが話す機会を増やしていく。
・相談をしやすい環境を意識していく。
・会議では、できるだけ全員が発言するようにする。
・その際、指摘はするが、批判はしないようにする。
・お互いに感謝(ありがとうございます)を口にする。
・会社、職場、現場に対する共通の価値観を高めていく。
・失敗の体験を共有し、成功する経験を重ねていく。
・お互いに指摘を受け入れ、学習の機会であると考える。
集団分析結果は、「職場を振り返るアジェンダ」として長所に着目することで、従業員エンゲージメントの向上をはじめ、多様な職場改善につなげていくことができます。
経済産業省の「健康経営における『心の健康』投資・実践ガイド」においても、「心の健康投資」としてマネジメントサイクル(課題分析/体制・施策の評価・対策検討/対策実行/評価・改善)を継続的に回していく重要性が示されています。
最後に、このサイクルを実効性のあるものにするには、外部機関との連携も重要であることが指摘されます。
結果を渡して終わりにするのではなく、職場の長所に着目したアドバイスや具体的な改善プログラムの推進まで伴走してくれる外部機関を活用し、職場環境を継続的に改善するきっかけにしていくことが重要です。
セミナーの最後には、講演で提示された「集団分析の改善への活用」や「心理的安全性の確保」を推進するための支援プログラムについて、主催のエムステージ・フジEAPセンターより紹介がありました。
両社では、現場の課題の深度や対象範囲に応じ、以下2つのアプローチで職場環境改善を総合的にサポートしています。
登壇者:鈴木 友紀夫
株式会社フジEAPセンター 代表取締役 / 株式会社エムステージ 執行役員
東京理科大学卒。大手医師紹介サービス会社へ入社後2003年株式会社エムステージ創業メンバーとして参画。その後、取締役へ就任。2016年産業保健事業部(現ウェルビーイング事業部)を立ち上げる。2022年4月に株式会社リウェルを設立し、代表取締役就任。2026年1月より株式会社フジEAPセンターの代表取締役に就任。2社で代表を務める。
健康リスクが高い職場や不調者が発生している特定の部署に対して、専門職が現場の課題解決に向けた具体的なアクションプランの策定をサポートします。
全社および各階層のリテラシー向上とコミュニケーションの円滑化を図り、不調者の未然防止と働きやすい職場風土づくりを推進します。
階層別研修
セルフケアやラインケア研修をはじめ、コミュニケーション、ハラスメント対策など、各企業のニーズや課題に応じた研修プログラムを提供します。
対話促進の施策(グループアプローチ・1on1面談)
・グループアプローチ:「階層×テーマ」を設定したファシリテーションを行います。対話を重視した交流と相互理解の場を提供し、働きやすい環境づくりを推進します。
・管理職1on1面談: カウンセラーやコンサルタントが管理職と個別面談を行い、集団分析結果や管理職の方が実感されている課題を整理した上で、実効性の高いアクションプランを共に作成します。
貴社の課題やエリアに合わせて、最適なサポートをご提案いたします。
ぜひお気軽にご相談ください。
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・ストレスチェックの結果を分析する際、ネガティブな部分に注目してしまいがちですが、ポジティブな部分に着目し、長所を伸ばしていくという点が印象に残りました。
・ストレスチェックの基本や本来の目的を改めて認識でき、今後の施策展開に向けた考え方の参考になりました。
・これまではストレスチェックの振り返りを個人任せにしていました。今回のセミナーでお話にあったように「結果の答え合わせ」をする機会ができるとよいと思いました。
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