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鉄道
100~299名
嘱託産業医

豊橋鉄道株式会社

「企業は地域の構成要素の1つ」地域と職域の連携を目指す豊橋鉄道が取り組む健康経営とは

豊橋鉄道株式会社 / 総務部 / 森下様、赤川様

  • 導入の背景

    健康経営の推進のために保健師が安心して活動できる産業医を探していた

  • 導入の効果

    どのようなケースであっても医師としてしっかりと判断をしてくれる。労災防止の観点でも指導いただけた。

電車やバスの運行をはじめとした地域に貢献するさまざまな事業を展開している豊橋鉄道株式会社。地域と職域の連携を目指し、従業員の産業保健活動にも注力して健康経営を推進しています。
 
同社が取り組む健康経営や地域との関わり方について、総務部の森下さんと保健師の赤川さんにお話を伺いました。


右:森下 干城さん
2001年に豊橋鉄道へ入社。鉄道の現場やバスの営業部門を経験した後に企画部門を経て、現在は総務部に所属し総括安全衛生管理者を担当。採用や人材教育、広報など幅広い業務のご経験を持つ。

左:赤川 景子さん
2012年に豊橋鉄道へ入社し、総務部で産業保健師として活動。前職までに、大手製造業や保健所に勤務。社内の産業保健活動だけでなく、セミナー講師などとしても精力的に活動されている。


「保健師」としてだけでなく「経営」の視点を持つように

「保健師」としてだけでなく「経営」の視点を持つように

鉄道事業ならではの健康課題と、
継続して実施できている基本的な健康経営の取組を教えてください

赤川さん:宿泊を伴う勤務などで十分な睡眠時間を確保できないことが課題です。4~5時間の短い睡眠の後に、早朝から仕事を再開することも多いので不規則な勤務によって「朝は食欲がわかない」などを理由に、食事をうまく取れないケースもあります。

また運転士は長時間座ったままの勤務を強いられる点が特徴で、協会けんぽの「現金給付受給者状況調査」の傷病別休業件数の割合と比較して、弊社グループでは整形外科関係の疾患で休む従業員が多い傾向があります。

そのような中、健康診断の受診率を100%にすることや、再検査や精密検査の必要がある方への受診勧奨など、労働安全衛生法に沿った取組は継続して実施してきました。

ストレスチェックは従業員が50人未満の事業所も含めすべての事業所で実施しています。
また運輸現場業務の方の健康管理として脳ドックや心臓CT、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査の実施と精密検査費用の全額補助をしています。

健康経営の推進にあたって、困難だったことはありますか?

赤川さん:私が着任した当初はお恥ずかしい話ですが、精密検査に該当したら病院に行かなければいけないことを従業員の方々が理解していませんでした。受診を促しても「なんで行かないといけないの?」という反応に苦労した時期があります。
 
手紙を渡してみたり、所属長と対象者のリストを共有して声かけをしたりして、受診率が上がるように地道な活動を続けました。その結果、一時期はグループ全体で6割以上の方に再検査を受けてもらえるようになりました。引き続き個別にアプローチをしていきたいと感じています。
 
異常を放置してしまって、「あの時に病院に行っておけばよかった」という後悔が起きないように日々伝えています。せっかく健康診断を受けているのにもったいないですから。

経産省が「健康経営」を推進しはじめる前後で、変化はありましたか?

赤川さん:私自身の変化としては、経営学の視点を意識するようになりました。上司や経営層に対して産業保健活動について説明する時に、保健師としての専門性だけではなく、経営層が何を考えて何を求めているのかを考えるようになりました。
 
森下さん:経営層が従業員の健康について前向きに捉えるきっかけになったと感じます。健康経営に力をいれることで、健康経営優良法人に認定されると社会的なステータスの1つになるだけでなく、経営の効率化にもつながると認識しています。経営層を巻き込んだ産業保健活動がしやすくなりました。

産業医選任サービスを利用して保健師が安心して活動できるようになった

エムステージの産業医選任サービスを利用してみた感想を教えてください

赤川さん:十分すぎるくらい、いろいろなことにご対応いただけて大変満足しています。どのようなケースであっても医師としてしっかりと判断をしてくれるので、「これって保健師の私が判断していいのかな」といった悩みがなくなり、チームとして安心して働けるようになりました。
 
森下さん:労災防止の観点でも指導をいただいています。転倒防止処置や空気清浄機の清掃などについて、私たちが気づかないところまで指導していただけるので、安全への配慮や衛生面のチェックを改めて意識するようになりました。
 
赤川さん:座ったままの勤務による身体の不調が多いので、整形外科専門医・指導医である産業医から臨床の知識を活かしたアドバイスがもらえるのも助かっています。

従業員が暮らすのは企業ではなく地域

従業員が暮らすのは企業ではなく地域

従業員の健康管理以外にも、行政と連携してさまざまな取組をされていますが、認知症研修を始めた経緯について教えてください

森下さん:認知症の方々が公共交通機関を利用しやすい地域づくりの一環として、行政から「一緒に取り組んでいきましょう」と声をかけていただきました。実際に従業員も現場で認知症と思われるお客様の接客をしたことがあるという声もあり、認知症に関する基礎知識や対応する際に気を付けることなどを学んでもらいました。


コロナ禍では多人数での集合研修ができなかったのですが、行政から講師を派遣してもらい少人数で研修を実施したことで、より理解を深めることができました。状況に応じてできることに取り組んできた結果として、地域の方から評価をしてもらっています。
他にも、地域の大学と連携協定を締結し、その取組の一環として弊社のプロフィール動画を作っていただきました。また地域のイベントに積極的に関わるなど地域とのつながりを重視した活動を行っています。

会社の外にも目を向けるようになったきっかけはありますか?

赤川さん:地域の健康度が上がれば、そこで暮らす従業員にもメリットがあると考えました。従業員としての顔だけでなく、豊橋市民であり、誰かの父母であり、また誰かの子供でもあり、従業員にはいろいろな顔があります。保健所や地域包括支援センターで働いていたキャリアの中でそのような視点を持つようになっていたので、自然と社外にも目が向いていました。

 自社の取組を外部に発信することも保健師の役割だと思っています。セミナーの講師や発表などもできる限りお断りせずお受けするようにしてきました。会社のPRになりますし、自身にとっても改めてその取組について深く考えるきっかけになるからです。

赤川さんが保健師として関心のある取組を教えてください

赤川さん:企業は地域の構成要素の1つという言い方をよくしているのですが、私が独自に関心があることの中に、地域と職域の連携があります。企業は地域の中で成り立つ組織なので、行政と企業がうまく連携して、お互いにWin-Winな関係を築くことが大切だと思います。今後は地域のシステムづくりにも取り組みたいです。

 産学連携にも目を向けていきたいと考えています。産業保健師として活動しながら論文発表にも取り組み、エビデンスのある活動をすることが目標の1つです。
 
コロナ禍に大学院に在籍していたのですが、その時期に日本産業保健法学会副代表理事の三柴丈典先生のセミナーに参加し、感銘を受けました。現在は日本産業保健法学会に入会して講座や本で学んでいます。
従業員に向けたコロナウイルス対策の対応もある中で、大学院での研究と通常業務と育児の両立はかなり大変でしたが、森下をはじめ周りの人に支えられて乗り越えられました。感謝しています。
 
森下さん:お客様の命を預かる仕事なので、従業員の健康が第一です。そのために赤川は常に惜しみなく活動してくれています。

定年退職後も人生を楽しめるように、自律的な健康管理を

定年退職後も人生を楽しめるように、自律的な健康管理を

今後の産業保健活動に関して、直近で取り組みたいことはありますか?

赤川さん:まずは喫煙対策を実施したいと考えています。
鉄道業界に共通している課題なのかもしれませんが、まだまだ古い体質が残っているようで、タバコの健康被害に対する認識が甘い側面があります。今年中に本社部門から、就業時間内の喫煙は控えてもらうことを目指していきたいです。

最後に、健康経営における理想の姿を教えてください

赤川さん:最終的には保健師がいなくても従業員が自律的に健康管理をできる状態が理想です。まだまだ健康意識に差があるので、「当たり前」の基準の底上げをしたいと考えています。
弊社の従業員でいる間だけでなく、一人ひとりが、健康維持・増進のために適切な健康行動を一生涯、当たり前に行えるようになってほしいです。

退職したあとも第2、第3の人生を楽しめるように在職中から健康でいることがワークエンゲージメントにもつながるのではないでしょうか。
そのためにも、たとえば「お孫さんが成人する姿を見たいですよね。元気で長生きするためには、ここの数値をもう少し改善したいですよね。」というように、ライフイベントにあわせてコミュニケーションを取るように意識しています。
 
森下さん:心身ともに健康で働くことがパフォーマンスの向上につながり、会社の業績にも好影響を与えるのだと、従業員がもっと認識することが大切だと思います。
会社に言われたからやるといった他人任せではなく、目的意識を持って取り組んでもらえるよう、全体のレベルを上げていきたい。それを達成するためにも、今後も安全衛生委員会や健康講話の実施に精力的に取り組みたいです。

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