全国に張り巡らせた輸送ネットワークを使って、あらゆる個人・法人のお客さまに、「宅急便」をはじめとする高品質な小口輸送サービスを提供しているヤマト運輸。
地域に密着したサービスを提供するため、社員数は18万人を超えており、事業所の数も3,000を超えているという。そんなヤマト運輸が取り組む、産業保健体制の構築・社員の健康への取り組みを同社 人材開発部 EX推進チームマネージャー 高橋幸一さんに話を伺いました。
はじめに、ご担当なさっている業務内容をお伺いしてよろしいでしょうか。
私が所属するEX推進チームのEXとは、Employee Experienceの略称で、従業員の体験価値を高めるために、社員が「ヤマト運輸に勤めていてよかった」と思えるような施策を進めるチームです。
その施策の1つに健康経営があり、社員が健康かつ安心して働き続けるために、その基礎となる産業保健体制の構築において、産業医の安定的な確保と産業保健活動の質の向上の面でエムステージさまにご協力いただいています。
ヤマト運輸さまではすでに健康経営に関する取り組みがあったようですが、どのような内容だったのでしょうか。
ヤマトグループでは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現に貢献」するには、社員の健康が不可欠であるという考えのもと、2010年に「ヤマトグループ健康宣言」を掲げ、生活習慣病・メンタルヘルス・禁煙の3つに取り組んできました。
生活習慣病対策では、社員の「生活習慣病リスク」の減少を目指し、健康保険組合と連携して、特定健康診査および特定保健指導の実施を強化しています。社員が保健指導を受けやすいよう、所属長が面談時間に配慮した勤務シフトを組んだり、オンライン面談を導入するなど工夫しています。その結果、近年の特定保健指導の完了率は9割を超え、特定保健指導実施者の約4割に健康状況の改善が見られ、指導対象から脱却しています。
メンタルヘルスは、社員に対して社内の専門窓口への相談や最寄りの病院への受診など、病気を予防するために必要なセルフケアを促しています。またラインケアの教育も行い、上司が部下の不調に気づいて社内の相談窓口や産業医につなげられるような職場づくりにも取り組んでいます。
禁煙は、これまで禁煙の費用補助や卒煙キャンペーンなどを実施し、減少傾向ではありますが、日本の平均喫煙率と比較するとまだまだ高い水準です。そこで今期からまずは本社で1日禁煙デーの実施や社内の喫煙所の利用時間制限、社内医務室による無料の禁煙外来など新たな取り組みもスタートさせました。
先行して独自で取り組みながら、産業保健体制の整備に注力するようになったきっかけは何だったのでしょうか。
各拠点の産業医についてはきちんと選任されていたのですが、各地域の人事担当者や事業所長が産業医を探し、個別に交渉・契約を行っており、産業医の少ない地域で医師が見つからない、個別契約のために職務内容にバラつきがあるなど、法で定められた職務遂行ができる産業医を安定的に確保する事が大きな負担・課題となっていました。
そのような状況の解決策として、エムステージさまに産業医業務委託サービスをご提案いただきました。
産業医業務の外部委託で同水準の産業保健体制を整備
エムステージの産業医サービスはどのように役立っていますか。
まずは、法で定められた職務の遂行ができる産業医を安定的に確保できること。そして、産業保健活動の標準化・業務効率化ができ、産業保健の質が担保できることです。
また、「エムコネクト」という産業保健業務の管理を行うクラウドシステムを利用できることも大きな利点となっています。各事業所の所属長や産業医、人事担当者がシステム上で、職場巡視や安全衛生委員会の記録管理をすることで、情報の一元化と見える化が実現できました。
クラウドシステムの導入で産業医業務の管理を効率化
エムステージのエムコネクト(※)導入後の状況はいかがですか。
実は、エムステージさまに産業医業務を委託する上で決め手になったのが、エムコネクトでした。
以前は安全衛生委員会の資料や議事録を事業所ごとに紙媒体で保管していたため、各事業所と上位組織である主管支店や本社間で情報共有に時間や手間がかかるといった状況でした。エムコネクトを導入した事で、事業所と上位組織の双方向で書類のアップロードが可能となり、情報共有や状況把握が楽になりました。今後は新たな産業保健活動を展開していく場面においても活用できると期待しています。
※エムステージでは、エムコネクト(M CONNECT)と呼ばれる産業医業務をクラウドで一括管理できるサービスを提供しています。
今後の展望をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
健康経営への取り組みですので、やはり社員の健康保持・増進により生産性向上や社員の働きがいにつながることを目指しています。
本当の意味で社員が心身ともに健康な状態でいられる職場環境をつくるには、産業保健体制の整備・構築や健康増進施策と併せて、社員にも自身の健康に興味・関心を持ってもらう必要があります。当社では食事、飲酒、喫煙、睡眠など生活習慣の課題が多いので、そういった教育にも力を入れていきたいです。