福島県会津地方の中部に位置する磐梯町は、雄大な磐梯山の南麓に広がる人口約3,300人の町です。町民の暮らしを支える磐梯町役場の取り組みについて、総務課の高畑様にお話をうかがいました。
高畑様:磐梯町役場に入職後、水道事業や住民課福祉担当、税務財政などさまざまな業務を担当した後、現在は総務課に勤務。労働安全衛生や職員採用、町の条例規則の審査整備、議会対応など幅広い業務を担当している。 |
多様化する業務と、手放せぬ現場対応

磐梯町役場から望む磐梯山
役場の主な業務内容教えてください
地域住民の方の窓口対応や、公共施設の管理や地域振興など、非常に多岐に渡ります。磐梯町は小さな規模の町ですので職員数が限られており、一人ひとりが複数の業務を兼任しています。
日々の通常業務に加えて、臨時給付金の対応や選挙関連の業務、大雪など自然災害への対応など、突発的に業務が発生することも少なくありません。衆議院の解散など、予測できないタイミングで業務負荷が一時的にかかってしまうこともあります。
住民の方のニーズも、時代の変化とともに多様化していますので、多角的な地域政策に取り組んでいます。
昔と比べて、働き方や環境の変化などはありますか?
ここ十数年の間で、効率化やIT化が進む一方で、業務量は多くなりましたね。
国や県とのやりとりも、以前は書類を郵送していましたが、今はメールが主流ですので「明日までに回答してください」といった急ぎの依頼が増えました。
コロナ禍では、在宅で業務が回る一部の職員はテレワーク勤務をしていましたが、やはり住民と対面でのやりとりが欠かせない仕事ですので、現在はほとんどの職員が登庁して勤務をしています。
「ひとりで抱え込まないように」職員のメンタルヘルスをサポート
職員の方の健康課題について教えてください
メンタルヘルス不調を抱える職員が以前より増えているように思います。
当町では、人事異動により3~5年で所属の異動があるため、上司が替わったり、全く違う職種になったりすることが珍しくありません。職場環境の変化への適応が、ストレスになることがあるのでしょう。
また、多様な住民ニーズに応えるため、施策の迅速な見直しが行われる中で、複雑化する業務や、変化の速さに対応する難しさなどもあると思います。
不調者のフォローやキャッチアップをどのように実施しているのでしょうか
メンタルヘルス不調者が発生したら、町の総務課や保健師による面談を実施しています。本人の希望や相談内容次第で、外部の相談窓口や、臨床心理士などと面談してもらうケースもあります。実際に相談した職員からは「気持ちが軽くなった」という声が聞かれます。
不調者の把握に関しては、基本的には所属長から、あるいは本人から総務に相談があり、対応するという流れです。ただし、自分から言い出しにくいこともあるかと思われますので、相談のハードルを下げるために、匿名で相談・報告ができるWebフォームも設けています。
昨今では内部・外部を問わずハラスメントが問題になっていますので、ハラスメントにまつわるアンケート調査も毎年実施しています。ささいなことでも構わないので、ひとりで悩まずに、気軽に相談できる職場環境を目指しています。
研修によって見えた、管理職の意識変化
エムステージの研修サービスを導入いただいた経緯やきっかけを教えてください
エムステージに研修を依頼する前から、メンタルヘルスやハラスメントに関する研修は長らく実施をしていました。しかし、当町でも不調者が発生している背景もあり、研修内容を改めた方が良いのではないかと検討をしました。
そこで、ストレスチェックを依頼しているエムステージに研修も依頼すれば、ストレスチェック結果データを元に、職員のメンタルヘルス課題にあわせた研修内容を組んでもらえるのではないかと期待し、導入を決めました。 また、ハラスメントについての認識が世間的に広まっていく中で、一昔前の常識や当たり前が通用しなくなっている面があります。誰もが加害者になる可能性を理解し、無自覚なハラスメントが起こらないよう、職員全員が価値観をアップデートしていくことが重要と考え、研修を実施しています。
時代の変化や、職員の課題にマッチした研修内容にするために、導入を決めたのですね
そうですね。役場の実情に合わせて、どのような研修プログラムを組むのが効果的か、丁寧に相談にのってもらえる点が魅力だと感じています。
例えば、ハラスメントがテーマの研修といっても、アプローチの仕方はさまざまです。
ハラスメントにおける法的責任など、リスクを強調して注意喚起をするのか、それとも部下への具体的な声かけの仕方など、管理職個人の対応スキルに焦点を当てるのか、どちらにするかを悩みました。
エムステージの担当の方からは、「部下とのコミュニケーションに困っている管理職が世間的にも多い。具体的なシチュエーションや発言の良い例・悪い例などを、管理職の視点から紹介してみてはどうか。」というアドバイスをいただき、参考になりました。
研修の実施方法についても、オンラインとオフラインでの実施を柔軟に選べる点が助かっています。コロナ禍では一同に集まるのが難しかったため、オンラインで研修を実施していました。
「参加率の高さ」という点ではオンラインが良かったのですが、「研修内容の理解度」という点では、やはり対面の方が効果的だと感じ、近年ではオフラインでの実施をしています。
研修の反響や感想はいかがでしょうか
ハラスメント研修後は、「相手の捉え方次第で、自分が意図していないように伝わることもあると気がついた。言葉遣いやコミュニケーションの取り方を注意しないといけない。」といった声が管理職から聞かれるようになり、少しずつですが意識の変化を感じています。
今後はカスタマーハラスメントの対策にも注力していこうと感じています。当町ではあまり多くないものの、「発生した時にどのように対応すれば良いのか、発生させないために日頃から気を付けておくべきこと」など、具体的な対応や予防策について、研修を通じて職員に周知できればと考えています。
何でも相談できる風通しの良い職場を目指したい

磐梯町マスコットキャラクター「ロボばんじぃ」
産業保健活動において、これから取り組みたいことを教えてください
まずは、健康診断後の再検査の受診率を上げていきたいです。
職員には定年まで元気に働いてほしいと願っていますが、生活習慣に関する数値の有所見者がやや目立つのが現状です。自覚症状がないと危機感を持ちづらいようで、つい放置してしまっている職員が少なくありません。健康意識を高めてもらえるよう対策を行いたいと考えています。
また、職員がいきいきと長く働いてもらうためには、「風通しの良い職場づくり」が欠かせません。そのためにも、メンタルヘルス不調やハラスメント予防のための研修は、毎年継続して実施することが重要だと感じています。
何か起きた時にすぐに相談ができるよう、普段からコミュニケーションを活性化させたり、相談体制の整備を引き続き強化していきたいです。