油化事業をはじめ、さまざまな事業を展開する日油株式会社が、従業員およそ600名を対象にした大規模なメンタルヘルス研修を実施。
研修開催までの困難や実施後に実感した効果、今後の展望について、同社のご担当者様にお話しを伺いました。
大規模なメンタルヘルス研修を無事に成功。その舞台裏とは
最初に、貴社の事業内容などについて教えていただけますか。
当社は、1949年の創業以来、事業の多角化、グローバル化、そしてまた、事業領域と経営資源の選択と集中を進めながら成長してきた化学メーカーです。現在、油化、化成、化薬、食品、ライフサイエンス、DDS、防錆などの事業を多面的に展開しています。
東京都渋谷区に所在する本社の他、国内外に工場・研究所を有しており、1,700名を超える従業員が働いています。
この度はメンタルヘルス研修を実施されましたが、経緯などについて詳しくお聞かせください。
昨年のストレスチェックの結果を踏まえ、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ目的として「従業員のために会社として何かできないか」と考え、愛知の工場を中心にコーピングとソーシャルスキル研修を実施することにしました。
受講の対象とした従業員の人数は約600名と、かなり大規模なプロジェクトとなりましたが、研修の運営を担当した人事・総務部と講師をはじめ、各事業場の担当者、従業員の全員の協力によって無事に終えることができました。
大規模な研修を成功された事例としてお聞きしたいのですが、研修の運営ではどのような点に苦労されましたか。
やはり、約600名という大人数が複数回の研修(約2ヶ月、約40回開催)を受講しますので、従業員のスケジュール調整には苦心しました。
また、研修は5か所の会場にて全てオンラインによりリアルタイムで実施しましたから、多数のパソコン端末を用意することも必要でしたし、オンライン会議ツールの使用法が分からない従業員に対するレクチャーなども不可欠でした。
研修開始までの準備期間は約3週間と時間も限られており、各種の調整や体制の整備には苦労がありましたね。
主催者と参加者、双方の協力によって研修開催が実現
メンタルヘルス研修の風景
それらの課題については、どのようにクリアされたのでしょうか。
これらの課題を解決するためには、主催者である総務や講師などの運営チームだけでなく、受講者も含めた全員の協力が必要でした。
それにより、研修実施の課題をクリアすることができたのです。
はじめに、スケジュールの調整についてですが、工場の従業員は交替制で働いていますので、どうしても受講可能な日時がバラバラになってしまいます。
ですので、必然的に業務の合間を縫って研修を実施することになったのです。
そこで、まずは従業員から受講可能な希望日のヒアリングを行い、運営側で日程調整。
中には多忙ゆえに難色を示す従業員も居ましたが、研修の意義を説明することで納得してもらうことができました。
根気強く調整を繰り返し、スケジュールを組むことに成功しました。
会議ツールについてはスムーズに運用できましたか。
普段から工場に勤務している従業員がほとんどですので、オンライン会議のツールを利用したことがない者が多かったです。
そこで、運営側にて会議ツールの利用マニュアルを制作し、従業員に事前配布しました。
また、それだけではカバーしきれない操作方法などについては、ツールの利用経験があるオフィス勤務者がレクチャーを施したり、主催者である総務が研修開始前に極力会場に足を運んでサポートするなどして、無事に実施することが出来たのです。
まずはスタートが重要となるプロジェクトでしたが、研修開始後はスムーズに運営が出来たと感じています。
そして、研修の回数を重ね、後半になるほど充実していった感触があります。
それは、受講する従業員および運営するスタッフが研修に慣れてきたということもあるのかも知れませんが、講師の先生が寄り添った講演を行なってくれたことにも要因があると思います。
研修の充実化について、どのような工夫があったのでしょうか。
例えば、研修の当日、講師の先生から参加者の部署や役職といった情報を事前にヒアリングしていただいていました。
これにより、その日その時の受講者に合った内容でプログラムを進めていただくことが出来たのだと考えます。
また、研修の終了後には講師の先生とわれわれ運営チームとでミーティングを開き、その日の研修内容を総括。
感じた課題や受講者の感触といった情報を講師の先生と共有し、その後の研修プログラムに活かす工夫を行ないました。
先生の協力的な対応があり、研修をより充実化させることが出来たと思っています。
今後は全社的な取組みとして、全社に拡げていきたい
研修のプログラムをすべて終了してみて、従業員の方の反応はいかがでしたか。
研修のプログラムが終了した後、受講者に対してアンケートを行ないました。
現在(取材時:2021年9月)アンケートの結果を集計中なのですが、研修の感触については良好です。
中には、今後の課題として受け止めるべき回答もありましたし、効果についての実感は「プラマイゼロ」というものもありましたが、多くの従業員が概ね満足しているという結果が出ております。
また、たとえプラマイゼロであっても良いと考えています。それは、本人が日頃から上手にメンタルヘルスと付き合えているという結果でもありますからね。
やはり、今回実施した研修がプラスになっている従業員が多数おり、回答の中には「研修を受講したことは役に立った」、「自身のメンタルヘルスとの向き合い方の気づきになった」という回答があったことは、主催者としても嬉しく思います。
今回の研修を活用し、今後はどのような産業保健活動を進めていきたいとお考えでしょうか。
これから今年のストレスチェックを控えているため、結果のさらなる改善には期待しています。ストレスチェックは「Co-Labo(78項目)およびプレゼンティーズム(30問)」を利用していますので、しっかりと結果の集団分析を行ない、PDCAサイクルを回していく考えです。
今回の研修は600名規模の大規模な研修の開催ということで、実施や運営に関してさまざまな困難もありました。
しかし、こうして無事にすべてのスケジュールを実施することができたことで、受講者・運営側ともに得る物があった研修だと実感しています。
また、今後は従業員への福利厚生の充実化を目指し、全社的な取組みとして広げ継続していきたいですね。