貴金属および希少金属の生産や、リサイクルによる再資源化を主力事業とするAREホールディングス。国内外に30以上の拠点を有する同社ならではの、健康経営推進における課題や、取り組みについてお伺いしました。
法定外の健診と健康相談窓口で、従業員の不調を早期発見
貴社の事業内容を教えてください。
当社は「この手で守る自然と資源」をパーパスとして掲げ、貴金属事業および環境保全事業を展開しています。
事業会社であるアサヒプリテック株式会社、アサヒメタルファイン株式会社は、貴金属事業の中核を担い、さまざまな産業分野から回収した貴金属含有スクラップを精製・加工し、高純度地金としてリサイクルしています。貴金属資源の有効活用と循環型社会の実現に貢献することで、サーキュラーエコノミーの構築に取り組んでいます。
従業員の方の健康管理のため取り組まれていることを教えてください。
当社はかねてより、従業員の健康に対する経営層の想いが強く、法定を上回る手厚い健診コースを、会社負担で提供しています。
たとえば、35歳以上の従業員には胃部内視鏡検査、40歳以上の従業員にはPET検査または脳MRI・MRA検査、大腸内視鏡検査をほぼ全額会社負担で実施することで、早期発見・早期治療を推奨しています。
また、生活習慣病の予防と悪化防止に力を入れており、再検査が必要な方には受診を積極的に勧奨するとともに、受診費用を補助しています。さらに、血圧値や血糖値には独自の基準を設け、ハイリスク該当者については経年変化を継続的にモニタリングしています。
メンタルヘルス面では、従業員が人事を介さず直接保健師に相談を申し込める健康相談窓口「社内保健室」を設置し、メール・対面・オンラインでの相談を受け付けています。
不調の初期段階から、産業医や保健師などの専門職と繋がれる体制を整えることで、症状の悪化を防ぎ、医療機関への受診や休職等の適切な対応をとることができています。
また、ラインケアの強化を図り、上司が部下の体調の変化に早期に気付くことのできる体制を構築しています。
6年連続で健康経営優良法人に認定されていますが、健康経営の推進において苦労されたことはありますか?
国内外に多数の営業所・工場・研究施設等を展開していることにより、統一的な健康管理の実施が課題でした。
全国規模での健康管理体制の統一化を図るため、現在は各拠点に健診担当者を選任しています。全拠点で安全衛生における法的要件を理解し、高い水準での健康経営の推進が実現できるよう、本社産業保健チームでは健診担当者を対象とした定期的な勉強会を開催しています。
産業保健職や『Co-Labo』の活用で強化されたメンタルヘルス対策
エムステージの産業医・保健師紹介サービスをご利用いただいた感想を教えてください。
当社は全国に拠点があるため、土地勘のない地方拠点での産業医選任は不安がありましたが、各拠点にマッチした産業医の先生をご紹介いただけるので助かっています。
特に、本社にはメンタルヘルスの知見がある産業医の先生をご紹介いただいたことで、増加傾向にあったメンタルヘルス不調者に対し、適切に対応することができるようになりました。
また、保健師の方には週2回出社をしていただき、健康経営に関する業務対応をしていただいています。以前までは人事担当者が通常業務と兼務で担っていましたが、産業保健職の立場から的確なご意見をいただけるので、従業員への健康サポートの質・量ともに向上させることができました。
産業医の先生や人事メンバーには話しにくい相談も、安心して気軽に相談できる「社内保健室」という窓口ができたことで、従業員の安心感につながっていると思います。
ストレスチェックツール『Co-Labo』導入後に見えてきた課題はありますか?
ストレスチェック結果の傾向としては、全国平均や業種平均よりも良好でした。しかし、職場環境の厳しい営業拠点や工場、交代勤務者、物流職は、社内の相対評価で総合健康リスクや高ストレス者率が高いことが分かりました。
Co-Laboは集団分析やクロス集計が容易にできるので、どこに課題があるのかが把握しやすい点が魅力です。集団分析を活用し、特にリスクの高い部門に個別フィードバックを行い、現場の管理者と意見交換をする中で、それぞれの部門の課題や取り組み状況がわかりやすくなりました。
従業員が生産性高く、生き生きと働けるよう、今後はプレゼンティーズムを指標として、職場環境改善に取り組んでいきたいです。
健康経営推進における、今後の展望を教えてください。
従業員の高齢化に伴い、エイジフレンドリーな職場づくりが必要だと考えています。工場の自動化などは既に進めていますが、腰痛防止のための運動指導や、作業環境の改善などに注力していきたいです。
また、現在は男性従業員が8割以上を占めていますが、昨今は女性従業員の採用も積極的に行っており、様々な職域で女性が活躍するようになってまいりました。これに伴い、女性特有の疾患等について、社内のリテラシー向上が必要だと感じています。
当社は「従業員一人ひとりの心身の健康こそが企業の財産である」という考えのもと、健康経営の推進をしてきました。不調の未然防止はもちろん、病気を抱えながら働く社員へのサポートなど、多様な健康課題に対して支援できるような体制づくりを、今後も進めていきたいです。